七十七銀行のインタビューGlobal Report「タイでポピュラーな歯科矯正~クリニック経営者へのインタビュー~」で取り上げていただきました。
タイで生活していると、バンコク都心部はもちろん、郊外の街でも、歯科矯正クリニックの 看板を多く見かけます。日本ではあまり見られない、赤・青・黄色等、カラフルな矯正器具を 付けた同僚や若者の姿を目にすることも多く、タイでは歯科矯正がとてもポピュラーな存在で あると感じます。今回は、タイ駐在の日本人も多く通院している歯科矯正クリニックの経営者 に、その背景等について伺いました。
歯科矯正クリニック経営者インタビュー
今回インタビューしたのは、バンコクの歯科矯正クリニック「SD CLINIC」の経営者で、歯科医の ミンミー先生です。このクリニックは2014年に、お母様の歯科医院を引継ぐ形で開業しましたが、日本 に留学して歯科矯正を学んだ先生の手腕と堪能な日本語が評判を呼び、現在では矯正専門クリニックと して、日本人患者が全体の90%を占めています。
タイにおける歯科矯正のイメージと現状
歯科矯正に対する一般的なタイ人のイメージは「歯科矯正 をしている人は裕福で、教養のある家庭出身に見える」とい うもので、一種のステータスシンボルとも言えると思います。 そのため、タイでは歯科矯正を行う若者が増加しており、 「目立たないよう隠して行う」という意識は薄く、むしろ、 派手な色の器具を使って、ファッションの一部として、矯正 していることをPRする人たちもいるほどです。 現在、タイには約10,000施設の歯科クリニックがあり、 歯科医師は約16,000人いると言われています(うち、バン コクには約6,000施設、約10,000人)が、若者を中心とし た歯科矯正の需要の高さから、歯科クリニック数・歯科医師 数ともに、まだまだ不足しているのが現状です。 日本では、一般的な歯列矯正の治療費は80万円~120万円 程度かと思いますが、タイでは5万タイバーツ(約18万円) 程度で同様の治療が受けられます。このため、タイ駐在中に 歯科矯正を行いたいという日本人も多く、私のクリニックに も、日本人の患者さんが多く来院されています。マスク着用 が習慣になったコロナ禍の今は、目立たない矯正を好む日本 人にとっては好機なのかもしれませんね。
矯正治療の流れと歯科矯正用ソフトについて
タイにおける一般的な矯正治療の流れは以下の通りです。
1.初診相談
2.精密検査
3.治療計画の説明
4.治療開始(矯正器具装着)
5.動的治療開始 3~6週間に1回のペースで通院
6.治療完了
※精密検査から治療完了まで、右写真のような 専用ソフトを使用して記録や分析を行います。
歯科矯正の治療においては、個々の患者さんに合わせた治療方法の分析や、経過の記録のために、歯 科矯正用ソフトを使用するのが一般的です。ハイスペックなソフトの場合、治療後の骨格等の予想図が 高精度で分析できる等、歯科医にとってはもちろん、患者さんにも高度なサービスが提供できます。 私のクリニックでは、開業当初はアメリカ製のソフトを使用していましたが、年間利用料が高い割に 使い勝手が今一つだったため、1年で解約してしまいました。現在は、日本製の比較的安価なソフトを 使用していますが、日本留学時に使用していた最先端のソフトの充実した機能が忘れられず、いつか導 入したいと考えています。タイの歯科クリニックでも、他との差別化のため、ハイスペックなソフトを 求める需要はあると思います。
今回のインタビューを通じて、タイでは歯科矯正がステータスシンボルやファッションの一部として 幅広く普及し、ポピュラーな存在になっていることを改めて実感しました。 タイ人への普及に加えて、タイに駐在する外国人をターゲットにした歯科矯正にも一定の需要があり、 歯科矯正用ソフトや治療器具等の関連産業を得意分野とする日本企業にも、ビジネスチャンスの可能性 が感じられました。
(タイ・バンコク駐在 新妻 孝則)
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