小児矯正
小児矯正とは、成長期の子どもを対象に行う歯列矯正治療のことです。大人の矯正と大きく異なる点は、まだ成長途中にある顎や骨格の発育を利用できることです。子どものうちに始めることで歯列や顎のバランスを整えやすく、顔立ちが自然に整う効果も期待できます。例えば出っ歯の場合は上顎の成長を抑えて下顎の成長を促し、受け口の場合は逆に下顎の成長を抑えて上顎を前に出すといった治療が可能です。
小児矯正を始める時期はいつ?
小児矯正を始める時期は、一般的には6~11歳前後(混合歯列期:乳歯と永久歯が混ざっている時期)が多いとされています。ただし、受け口や重度の不正咬合がある場合は、3~5歳頃からの早期介入が望ましいこともあります。最適な開始時期はお子さまの歯並びや成長の状態によって異なるため、専門医の診断を受けることが大切です。
年齢ごとの目安
小児矯正を始める時期は、お子さまの成長や歯並びの状態によって異なります。一般的な目安は以下の通りです。
年齢の目安 | 治療の目的 |
|---|---|
3歳頃〜 | 舌の癖・口呼吸など、機能的な問題がある場合は早期介入が望ましい |
Ⅰ期治療(6〜11歳) | 顎の成長を整え、歯がきれいに並ぶための土台づくりを行う |
Ⅱ期治療(12歳前後) | 永久歯が生えそろった後に行う、大人に近い矯正治療 |
子供の並びが悪くなる原因
子どもの歯並びが乱れるのは偶然ではありません。大きく分けて『遺伝』『生活習慣や癖』『乳歯の虫歯や早期喪失』の3つの原因が考えられます。
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遺伝
歯並びは遺伝の影響を受けやすいと言われています。例えば、顎が小さいのに歯が大きい場合は、スペース不足で歯がガタガタに並んでしまうことがあります。また骨格の特徴も遺伝しやすく、出っ歯(上顎前突)や受け口(反対咬合)、開咬などが親子で似るケースも少なくありません。
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生活習慣や癖
小さい頃の癖や生活習慣も歯並びに大きな影響を与えます。
例えば、3歳を過ぎても指しゃぶりが続くと、上顎が前に出て出っ歯や開咬になることがあります。また食べ物を飲み込む際に舌を前に押し出す「舌癖」は開咬やすきっ歯の原因に。さらに、口呼吸が習慣化すると顎が縦に伸びやすくなり、出っ歯や開咬につながります。頬杖やうつ伏せ寝なども顎を片側に押してしまい、左右差や交叉咬合を引き起こすことがあります。
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乳歯の虫歯や早期喪失
乳歯は永久歯が正しく生えるための大切なガイドです。虫歯で早く抜けてしまうと、スペースが失われて永久歯が正しい位置に並べなくなることがあります。また、乳歯を失うことで噛む回数が減り、顎の成長が不十分になることもあります。
小児矯正の対象となる子ども
以下のチェック項目に当てはまる場合は、小児矯正を検討しましょう。
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下の前歯が上の前歯より前に出ている(反対咬合/アンダーバイト)
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上下の歯が左右にずれてかみ合っている(交叉咬合)
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歯が重なってガタガタしている、またはすき間が多い
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前歯がかみ合わず、口を閉じても前歯の間にすき間がある(開咬)
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乳歯が早すぎる、または遅すぎる時期に抜けている
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上の前歯が大きく前に出ていて、唇を自然に閉じにくい
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歯が重なっている/生えてこない歯がある
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普段から口呼吸をしている
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出っ歯・受け口・噛み合わせの異常がある
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顔が左右非対称に見える
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発音や滑舌に問題がある
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顎関節に違和感(カクカク音や開けづらさ)がある
気になる点がある場合は、早めに矯正歯科で相談することをおすすめします。
小児矯正を検討すべき歯並びのサイン(7歳頃)
小児矯正でよく利用する装置の種類
床矯正装置
取り外しができる矯正装置で、口の中の「床(しょう)」部分にレジン(プラスチック)で作られたプレートとワイヤーがついています。 ネジを少しずつ回すことで顎を広げたり、歯を移動させたりします。
メリット:取り外せるので清掃しやすい。費用が比較的安い。
デメリット:装着時間を守らないと効果が出ない。歯の大きな移動には不向き。
対象:6〜12歳(混合歯列期)

画像提供:American Association of Orthodontists (AAO)

床矯正装置
急速拡大装置
上顎に固定して使用する装置で、真ん中のスクリューを回すことで短期間に上顎を広げます。 骨格的に狭い上顎を改善する際に用いられ、歯並びだけでなく鼻腔の広がりにより呼吸改善にも役立つことがあります。
メリット:短期間で大きな効果が得られる。顎の骨格的な問題を改善できる。
デメリット:固定式なので違和感が強い。清掃が難しい。
対象:6〜12歳頃

急速拡大装置
機能的矯正装置
下顎の位置を前方に誘導したり、筋肉の働きを利用して顎の成長をコントロールする装置です。 取り外し可能で、出っ歯や受け口など骨格的な不正咬合の改善に効果的です。
代表例:Twin Block(ツインブロック)、バイオネーター、フランケル装置 など
メリット:成長期の顎の成長を利用でき、将来の抜歯や外科手術を回避できる可能性がある。
デメリット:長時間の装着が必要。発音や食事に不便。
対象:6〜12歳

機能的矯正装置
筋機能矯正装置・ムーシールド
乳歯列期から使える取り外し式のマウスピース型装置で、主に「反対咬合(受け口)」の改善に使用します。 舌や口唇の筋肉のバランスを整え、下顎の過剰な前方成長を抑え、かみ合わせを正しい方向へ導きます。
メリット:3歳頃から始められる。就寝時中心の装着で負担が少ない。
デメリット:適応は反対咬合に限定される。装着習慣がつかないと効果が出にくい。
対象:3〜8歳頃

筋機能矯正装置・ムーシールド
マウスピース型矯正・インビザライン・ファースト
透明なマウスピース(アライナー)を段階的に交換しながら歯並びや顎の成長を整える最新の治療方法です。 デジタルシミュレーションにより、治療の進行を事前にイメージすることも可能です。
メリット:
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透明で目立ちにくい
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取り外し可能で食事や歯磨きがしやすい
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多くの不正咬合に対応できる
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1日20時間以上の装着が推奨され、しっかり装着することで効果を発揮
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混合歯列期に開始しながら、将来的に永久歯の歯並びも矯正できる
デメリット:
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費用が比較的高い
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装着時間を守らないと効果が出にくい
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複雑な症例では他装置との併用が必要になる場合もある
対象:6〜10歳(混合歯列期)

マウスピース型矯正
インビザライン・ファースト
どの装置が適切かは、お子さまの歯並びやあごの成長状態によって異なります。装置の種類はドクターが診断のうえで決定しますので、まずはお気軽にご相談ください。
治療の流れ
1. 初診・カウンセリング

初診時のカウンセリングでは、矯正治療の必要性や適切な治療の開始時期、治療方法の説明、治療期間及び費用の概要について説明致します。
2. 精密検査(レントゲン、模型、写真撮影)

診断に必要な歯の型を採取し、お顔やお口の中の写真、パノラマレントゲン写真、頭部X線規格写真など、診断・治療計画をたてるために必要な検査を行います。
3. 診断と治療計画の説明

検査の結果を元にドクターがお客様に合った治療計画の方法や治療費などについて、詳しい説明をします。
4. 矯正治療の開始

治療方法が決まったらいよいよ矯正治療の開始です。治療の進め方は患者様の症状によって異なります。矯正装置を装着したあとは、矯正中の口腔ケアについてご説明します。
5. 定期的な調整と経過観察

通常は3~6週間に1回のペ-スで通院が必要となります。 治療の段階によって、 通院頻度は異なります。
6. 保定期間

装置が取れた後の歯は、何もしなければ少しずつ動いてしまいます。動かした歯を支える骨や歯周組織が安定するまではリテーナーを装着します。通院は2~6ヶ月に1回程度。徐々に間隔をあけていきます。
小児矯正の治療費用
治療内容 | 価格 |
|---|---|
初診・カウンセリング | カウンセリング料は無料
初診料 300バーツ |
精密検査・診断料 | 4,000バーツ |
小児矯正治療費
矯正装置代 | 10,000~20,000バーツ |
矯正装置の調整料 | 調整料500バーツ
再診療 200バーツ |
インビザライン・ファースト | 100,000バーツ |
*備考 インビザライン・ファーストの場合はTotal feeのシステムなので、調整料を含めて100,000バーツ(分割のお支払い可能)です。診察の場合は再診料の200バーツのみかかります。
小児矯正のメリット・デメリット
メリット
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歯を抜かずに矯正できる可能性が高い
大人の矯正ではスペースを確保するために抜歯が必要になることがありますが、子どもは顎の成長をコントロールできるため、歯を抜かずに治療できる可能性が高まります。
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顎のバランスや顔立ちが整いやすい
成長期に顎の前後・左右のバランスを整えることで、自然な顔立ちに導きやすくなります。見た目の改善だけでなく、噛み合わせや発音などの機能面にも良い影響があります。
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痛みが少ない
子どもの骨や歯は柔らかいため、動きがスムーズで、大人の矯正に比べて痛みや違和感が少ない傾向があります。
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むし歯や歯肉炎の予防になる
歯並びが整うと歯磨きがしやすくなり、磨き残しが減ります。その結果、むし歯や歯肉炎といった口腔トラブルの予防につながります。
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簡単な装置で治療できる可能性が高い
成長を利用できるため、大人に比べてシンプルな装置で治療できることが多く、将来的に外科手術が必要になるリスクを減らせます。
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大人よりも治療期間が短く済む可能性がある
子どもの歯や骨は柔らかいため矯正効果が早く出やすく、大人よりも短期間で改善できるケースがあります。同じ不正咬合でも、大人になってから矯正するより早く整いやすいのが特徴です。
デメリット
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治療期間が長くなる可能性がある
小児矯正は成長を利用できる大きなメリットがありますが、その一方で、永久歯がすべて生えそろった時点で「第2段階(本格矯正)」を行う必要が出てくることもあります。
この場合、治療が段階的に進むため、結果的に治療期間が長めになる可能性があるという点は知っておくと安心です。
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経済的な負担について
小児矯正は「第1期治療+第2期治療」と進むケースが多く、費用が2段階でかかることもあります。
ただし、成長期に治療を行うことで抜歯や手術を回避できる場合が多く、将来的な負担を軽減できる可能性がある点は大きなメリットでもあります。
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成長予測には個人差がある
子どもの顎や顔の成長は一人ひとり異なるため、予測通りに進まないこともあります。
その場合には、成人矯正で仕上げを行うこともありますが、小児矯正をしておくことで矯正の難易度や負担を抑えられるケースが多いのも事実です。
小児矯正についてよくある質問
小児矯正は何歳から始めるのが良いですか?
一般的には6〜11歳の混合歯列期(乳歯と永久歯が混ざる時期)が適しています。ただし、受け口や重度の不正咬合は3〜5歳から早期に治療を始めた方が良い場合もあります。
大人になってからの矯正と何が違いますか?
小児矯正は成長期の顎の発育を利用して、骨格や歯列のバランスを整えることができます。大人の矯正は主に歯を動かす治療となり、抜歯や外科手術が必要になることもあります。
治療はどのくらいの期間かかりますか?
症例によって異なりますが、Ⅰ期治療は約2〜4年、Ⅱ期治療はさらに2〜3年かかることがあります。早期に始めると段階的に治療を進められるため、将来的な負担を軽減できます。
治療は痛いですか?
子どもの骨や歯は柔らかいため、大人に比べて痛みは少ないとされています。装置をつけ始めた数日は違和感がありますが、徐々に慣れていくケースが多いです。
矯正装置は目立ちますか?
床矯正やマウスピース型矯正など、取り外し可能で目立ちにくい装置もあります。透明なマウスピース(インビザライン・ファースト)は特に人気です。
子どもが装置を嫌がった場合、どうすればいいですか?
初めは違和感を覚えることが多いため、慣れるまで時間をかけて装着する練習が必要です。親御さんが根気強くサポートし、定期的に歯科医院でフォローを受けることが効果につながります。
小児矯正をすると必ずⅡ期治療も必要ですか?
Ⅰ期治療だけで歯並びや噛み合わせが整うケースもあります。ただし、完全に仕上げるにはⅡ期治療を行った方が良い場合もあるため、経過を見ながら判断していきます。
スポーツや楽器演奏は続けられますか?
装置の種類によっては一時的に違和感があるものの、ほとんどの場合は問題なく続けられます。装置が外れるタイプなら、練習や試合のときに外すことも可能です。
小児矯正が終わった後は、リテーナーをつける必要がありますか?
一般的には、小児矯正が終わった後も歯並びを安定させるために一定期間リテーナーを使用します。ただし、症例によっては必ずしも専用のリテーナーが必要になるとは限りません。
当院では、追加費用がかからないよう工夫をしています。例えば、床矯正(拡大装置)で十分に拡大ができた場合は、その装置のスクリューを回さず固定した状態でリテーナーとして継続使用することが多いです。また、ツインブロック治療が終了した後も、装置を調整して機能的に動かないようにすることで、リテーナーとして活用することがあります。
